
私たちが初めてペルーを訪れたのは、2024年の秋でした。以来、北部の Colasay という地域で複数の生産者のコーヒーを取り扱っていますが、実はそのすべてがフェルナンデス一家のコーヒーです。兄の Yonal さん、妹の Merci さん、そして今回ご紹介するのが、二人の従兄弟にあたる Mareyla(マレイラ)さんです。
彼女の農園、La Golondrina があるのはColasay 地区のなかの La Higuera という小さな集落です。複数の小規模生産者がこの土地でコーヒーを栽培しています。Mareyla さんもそのひとりで、「Comité La Higuera」という生産者グループに参加しています。
Comité(コミテ)は、エクスポーターの Origin Coffee Lab(OCL)が実践している仕組みで、約200の生産者を17の委員会に組織し、栽培や品質の課題をグループ単位で解決していく取り組みです。 OCL は品質に応じたプレミアムを生産者に支払っていて、市場価格を大きく上回る買付を続けている組織です。
この地域には、収穫期に隣の農園どうしで手伝い合う「minga(ミンガ)」という習わしが残っているそうです。「今日はあなたのために、明日は私のために」。人手の要る収穫期を、小さな家族農園が乗り切るための知恵なのでしょう。

Colasay は、Cajamarca 県 Jaén 郡を構成する12の地区のひとつです。面積は約736km²、人口はおよそ1万人。中心の集落は標高1,775mにあり、コーヒー農園は1,800〜2,200mの帯に広がっています。
このあたりは「Ceja de Selva(セハ・デ・セルバ=密林のまつ毛)」と呼ばれる、アンデス山脈の東斜面がアマゾンの低地へ下りていく途中の雲霧林の帯にあたります。地区の南の縁を Chamaya 川が流れ、その水はやがてアマゾン川の源流のひとつであるマラニョン川に合流します。Colasay には2000年代半ばまで舗装された道が通っていなかったと言われていて、この隔絶が、後述する独自の品種がこの土地に残った背景のひとつなのかもしれません。
ペルーはブラジル・コロンビアに次ぐ南米第3の生産国と言われ、なかでも認証オーガニックのアラビカ種では世界最大級の生産国です。Cajamarca はペルーのコーヒー輸出のおよそ4割を占めるとされる一大産地で、その生産は Jaén と San Ignacio の2つの郡に集中しています。

Mareyla さんの農園 La Golondrina は、スペイン語で「ツバメ」を意味する名前の、2ヘクタールの小さな農園です。植えられている品種は Bourbon de Colasay のみ。 農園ではコーヒーのほかに、トウモロコシやユカ(キャッサバ)、ラカチャというアンデスの根菜も育てられているそうです。 ふだんの作業は2名の常勤スタッフとともに、収穫期には8名ほどの臨時のピッカーの手も借りながら行われます。
彼女は OCL のオーガニックプログラムに参加していて、このロットもマイクロロットとして仕上げられたものです。このロットの品種は、地元の生産者たちが「Bourbon de Colasay」と呼ぶ、この地域だけで育てられてきた系統です。 樹の姿は伝統的なブルボンによく似ているそうですが、面白いことに、遺伝子検査ではブルボンとは大きく異なり、カティモール系に近い結果が出たと言われています。しかも、既知のどのカティモール品種とも一致しないのだそうです。
ずっと昔にこの土地で起きた交配か突然変異の結果ではないか、と言われています。ブルボンより実付きがよく、サビ病への耐性も高い。それでいて、カティモール系にありがちな青っぽさや渋みが出にくい。正体のはっきりしない品種ですが、この土地の暮らしに長く寄り添ってきた、Colasay ならではの品種です。

カップには、ベリーやチェリーのようなはっきりした果実味と、ジャムを思わせる甘さがあります。オレンジの酸が全体を明るくまとめ、冷めてくるとアールグレイのような香りとキャラメルの甘さが余韻に残りました。
早朝に手摘みされたチェリーは、まず水に浮かべて選別されます。過熟や虫食いのチェリーは密度が低く水面に浮くため、この段階で取り除かれます。その後、小型のパルパーで果皮と果肉を除去し、水を使わないドライ発酵でミューシレージを分解します。この地域では24時間前後かけるのが一般的だそうです。
Mareyla さんの農園の発酵槽は、マヨリカ焼きのタイルで内側を仕上げたタンクです。表面が滑らかなタイル張りのタンクは汚れが残りにくく、発酵をクリーンにコントロールするための設備だと言われています。発酵を終えたパーチメントは洗浄し、ソーラードライヤー(ビニールで覆った温室型の乾燥棚)でゆっくり乾燥させます。雨の多いこの地域で、天候に左右されずに乾燥の速度を整えられるこの設備は、Jaén 一帯でコーヒーの品質を大きく引き上げてきたと言われています。
一家のほかのコーヒーと飲み比べていただくと、同じ土地・同じ品種でも、作り手ごとの個性を感じていただけると思います。
ギフト用送り状
チェックを入れることで、入力されたお名前がギフトのご依頼主として送り状に表記されます